先日、新型インフルエンザによる死亡者数が国内でも50人を超えました。今年は季節性のインフルエンザに対する意識も高まって、予防接種の予約が相次いでいる病院が多いそうです。
新型インフルエンザの予防接種に関しては、妊婦は医療従事者、基礎疾患を有する方に次いで優先的に接種できます。すでに地域によっては妊婦への予防接種が始まっていますが、もう1度妊婦が優先的に受ける理由を考えて、最善の予防ができるように考えてみましょう。
新型インフルエンザワクチンとは、毎年受ける季節性のインフルエンザワクチンとは別のワクチンです。今年、世界的に流行している新型インフルエンザを予防するためには、従来の季節性インフルエンザとは別の新型インフルエンザ予防ワクチンを接種します。
しかし、このワクチンが必ずしも新型インフルエンザを防ぐ確約にはなりません。予防とともに、死亡者や重病者になる確率を下げて症状が軽度で落ち着くことと、流行による医療機関の麻痺を防ぐ目的としています。
厳密には新型インフルエンザのワクチンは、新型インフルエンザのウイルスが発生しなければ作ることはできません。今回のように世界的に流行すると、ワクチンの製造が追いつかないのが現実です。その為、今回は優先的に接種すべき順番が定められました。
特に妊娠中は母体だけでなく胎児への影響が心配されます。海外では新型インフルエンザの死亡者に妊娠中の方が多く含まれていたという報告もあり、胎児を守る為にも妊娠中の方は優先的に接種するよう勧められています。妊婦にとって、新型インフルエンザのワクチンを接種することは、胎児を新型インフルエンザウイルスから守る最善の手段の1つだと言えます。
新型インフルエンザのワクチンの持続効果は、季節性のインフルエンザワクチンと同様の持続効果だと考えられています。季節性のワクチンを2回接種した後、1~2週間で抗体の持つ効果が上昇し始めます。1ヶ月後には効果がピークに達し、その後も3~4ヶ月は持続していくと言われています。
つまり、ワクチンを接種しても高い効果が表れるのは約1ヶ月後だと考えられます。ですから、今から接種しても抗体の高い効果はすぐには発揮されません。その間は、やはり手洗いうがいなどの励行がとても大切だと思います。
新型インフルエンザワクチンを接種した後、ワクチンの抗体が持続している期間に出産を迎える方もいると思います。ワクチンは不活性化と言って、体内で活性化する病原性のあるウイルスを除いて作られています。ですから母体の中でウイルスが増殖することはなく、授乳にも影響はありません。
また、出産後1年未満の保護者は優先接種対象者になっています。1歳未満の赤ちゃんにはワクチンの効果が実証されていないので、その保護者が接種することになります。接種前に出産を迎えた方も優先者の対象になるわけです。
新型インフルエンザワクチンの接種費用は季節性のワクチンと比べると、少し高い費用かもしれません。厚生労働省で公表されている接種費用は1回目が3600円、2回目が2550円です。2回受けると単純計算で6150円になります。これに妊婦検診が加わると、医療にかかる費用も大変だと感じるかもしれません。
妊婦が優先されているのは胎児に対する影響も危惧されているもので、母体だけの予防ではありません。新型インフルエンザの予防接種は、お腹の赤ちゃんと2人で受けるものだと考えて、できるだけ体調の安定している時に接種することをお勧めします。
予防接種をしても、それだけで確実にウイルス感染を防ぐことができるとは限りません。例えばインフルエンザのワクチンを接種したからと言って季節性の風邪をひかないわけではありませんし、他の病気で熱がでないわけでもありません。特にこれからの季節は寒く乾燥してきますが、ウイルスは低温・低湿度で活発に活動します。せっかく優先的に接種できるのですから、抗体の効果を最大限に利用できるよう毎日の予防も続けたいものです。
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