2013年は、2012年から始まった風しんの流行が長く続いていましたが、やっと風しん患者数が減少していることがわかりました。ところが先天性風しん症候群は増加中で、障害が出た赤ちゃんは32人にも増えました。
予防接種で様々な病気を防ぐことができるのに、風しんの流行が1年も続いているのも不思議です。注目すべきは風しんワクチンの予防接種です。
風しんウイルスは、抗体があれば感染しても発症しません。予防接種で風しんの抗体をつくることができます。通常、予防接種で抗体ができる症状は、なかなか流行しなくなることが多いのですが風しんは違います。
今では赤ちゃんが1歳の誕生日を迎えるタイミングで風しんの予防接種を受けるというのに、今回もまた風しんが流行してしまいました。
風しん予防接種は、けして効果がない訳ではありません。風しんの流行が長引いた原因の1つは、予防接種の対象者が変化していたことだと考えられます。
現在は赤ちゃんのうちに風しんの予防接種を受けることができますが、以前は女子中学生が風しんワクチンの接種対象できました。
やがて、風しんワクチンは麻疹(ましん)・おたふく風邪のワクチンと合同になって三種混合ワクチンと変化します。ここでやっと、男児にも風しんワクチンが接種されることになりました。
その後もワクチンの問題で一時期は、風しんワクチンだけの接種になる時期もありました。そして2006年になって現在の麻疹・風しん混合ワクチンが満1歳と小学校就学前の2回に分けた接種スケジュールで落ち着きました。
このように風しんワクチンは国内で接種できましたが、数回の接種方法の変更によって、予防接種を受けずに育った人がいるのです。
予防接種の問題だけではありませんが、予防接種の対象年齢や性別が変わると受け損じた年代がでてきます。特に20〜40代の男性が、風しんワクチンを接種していない可能性が高いと指摘されています。これを「予防接種の谷間時代」と呼ぶ声もあります。
そのため2013年も、20〜40代の男性を中心に風しんが流行してしまいました。だからといって、自分が風しんの予防接種を受けているのかは解らない人も多いのが現状です。
いまさら普段から母子手帳を見る機会も少ないので、風しんと気がつかずに体調悪化して病院で始めて抗体がないことを知る人もいます。たまたま風しんウイルスに感染しないだけで、実は抗体のない人だっているのです。
風しんの予防ワクチンを接種していない可能性が高い20〜40代の男性は働き盛りですから、人と多く接する機会があるので、誰かが風しんウイルスに感染すると一気に広がってしまう可能性があります。
さらに20〜40代なら結婚や妊娠に関わるときです。もしも相手の女性に風しんの抗体がなく、妊娠初期に感染すると赤ちゃんの先天性風しん症候群の可能性が高まります。
妊娠初期の特に4週目までの妊婦が風しんに感染した場合の先天性風しん症候群の確率は、なんと50%以上。妊娠に気がついたばかりの時期が、最も注意すべき時期なのです。
2013年の先天性風しん症候群の増加には、予防接種の対象者の変更による20〜40代の未接種率の高さが影響していると考えられます。
「予防接種の谷間世代」とも呼ばれるとおり、本人達の意思とは関係なく予防接種を受けるタイミングのなかった人達が、今ちょうど妊娠や出産に関わる時期だからです。
風しんウイルスに感染して影響を受けてしまうのは赤ちゃんです。もしも妊娠中に風しんに感染しても、母体は完治したら終わりです。でも、母体が完治しても赤ちゃんに影響が残ることが先天性風しん症候群の怖いところです。
風しんの予防接種を受けたかどうかは、自身の母子手帳でわかりますが、今現在の自分の風しん抗体の有無も確認することができます。
風しん抗体検査は、病院での簡単な血液検査です。各自治体で条件が合えば、抗体検査や予防接種の費用を助成する動きもあります。
ちなみに抗体は「予防接種を受けたか・受けていないか」だけではなく、「抗体価が今もちゃんとあるのか・抗体が少ないか」といったこともわかります。
長く続いた風しんの流行も落ち着きはじめましたが、やはり妊娠・出産に関わる人は、赤ちゃんのためにも風しん抗体の有無を確認することをおすすめします。次にまた風しんが流行してからでは遅いのです。