妊娠中は、花粉症の薬を服用するのも気になるものです。副作用の心配や、体に負担をかけず徐々にゆっくり完治を目指したい、特に薬で眠くなってしまうことが多くて困っている時は、医師に相談して漢方による治療も考えてみましょう。
細かくは鼻水やくしゃみといった花粉症の症状を直す漢方治療は「標治療(ひょうちりょう)」、根本的な花粉症そのものを治す漢方治療を「本治療(ほんちりょう)」と呼びます。本治療は花粉症になりやすい体質の改善もします。
漢方薬は自然の成分でできていますが、体に作用する点では風邪薬などの内服薬と同じです。内服薬と同様に使用の際の用法用量は人それぞれなので、専門家や医師に相談しましょう。他の薬と併用する際は、必ず医師や薬剤師に確認します。
妊娠中は特に体調が変わりやすく、つわりなど妊娠前とは違う症状がでることもあります。妊娠前は快方に向かう手助けとなった薬が、妊娠中は子宮の収縮を引き起こすこともあります。妊娠前から漢方を使用していても、妊娠中に使用する時は再び医師に相談しましょう。
確認は、妊娠中の検診を受けている主治医にします。漢方による治療を進めている先生なら更に詳しく教えてくれます。逆に担当の先生が漢方による治療に消極的な時もあります、その時は担当医との信頼関係を大切に、自分の考えを相談しましょう。
また、市販の漢方薬は製造工程によって、同じ名称でも成分に差があるものもあります。日本でつくられているか、他の国で作られて日本へ輸入されているのか確認しましょう。国によって用法用量にも差があります、市販の漢方薬を内服する際も、最初に担当医に相談してみましょう。
妊婦の薬の使用は、漢方に限らず判断が難しいものです。自己判断で使用しないことも、妊婦の漢方使用の大切な注意点です。
花粉症に効く漢方は、沢山あります。漢方の治療を始める時は、最も治していきたい目的を定めると良いと言われています。標治療では花粉症の症状が出た際の、緩和と治療を目的とします。妊娠中は、処方される薬の体への副作用も気になるものです。自然の草や木からとった成分の漢方薬による標治療は、そのような心配が少ない特徴があります。
漢方では花粉症の症状がでる原因は、体内の水分が必要なところになくて不必要なところに沢山溜まっていることが原因だと考えられています。この体内の水分は「水毒(すいどく)」と呼ばれ、分かりやすいのでは大量の鼻水や、足のむくみが挙げられます。
ですから標治療では、水毒による体内の水分バランスの乱れを解消していきます。そして本来の水分バランスを体内で保てるように治療していきます。花粉症の原因となる花粉に対してというよりも、花粉症の症状によって乱れた体内のバランスを治療するのです。
花粉症の標治療で、最も知られているのは小星竜湯(しょうせいりゅうとう)です。小星竜湯は、すでに鼻水、鼻詰まり、くしゃみに効果があるという試験結果があります。
小星竜湯の成分は、呼び名こそ異なりますが、意外と私たちの身近なものです。例えば、醤油の甘味料にもなる甘草(かんぞう)、生姜の表面の皮をむいて蒸して乾燥させた乾姜(かんきょう)、温熱作用もある桂皮(けいひ)はシナモンのことです。
特に小児喘息を含む、喘息の諸症状にも適しているとされるので、喘息気味の妊婦さんにもお勧めです。ただし低カリウム血しょうや、暑がりで多量発汗の人には向かないと言われています。保険適応なので病院での処方も、多くみられます。
葛根湯加辛夷川キュウ辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)は、小星竜湯と反対に暑がりで発汗の多い方にも向いています。鼻水や詰まり、くしゃみに効果を発揮します。体力のある人向き。
メインの成分はクズ科のクズの根っこである葛根(かっこん)で、発汗・温熱作用があります。辛夷(しんい)は日本では早春に真っ白な大きな花を咲かせる「こぶし」を指します。葛根湯加辛夷川キュウ辛夷は主に蓄膿症の治療にも適しているので、鼻症状に悩む花粉症の治療にも処方されています。
麻黄湯(まおうとう)は気管支喘息に効果的なエフェドリンを含む麻黄、あんずの種子のなかにある実を取り除いた杏仁(きょうにん)、桂皮、甘草らの成分が含まれています。
エフェドリンは気管支のぜえぜえする苦しい呼吸や咳を抑える効能があり、杏仁は咳や痰をきる効能があるので、花粉症でのどに異常のある時に服用します。
しかし、エフェドリンは心臓や血管に刺激を与える交感神経刺激薬でもあります。心臓や循環器系の疾患、高血圧の方は注意が必要です。また、妊娠中は発汗作用が強く働くと、不用な体力消費をおこします。使用の際は必ず医師に相談しましょう。
越婢加朮湯(えっぴかじゅうとう、えっぴかじゅうとう)は、目の酷い痒みやむくみに対する効果が期待できる漢方薬です。甘草や生姜、天然の石膏が成分に含まれます。体力があって発汗に強い人に向いています。
風邪諸症状の咳や喘息症状に適しています。ただし、症状の悪化していない体力のある患者向けだと言われています。妊娠中は体力の消耗が、通常よりも多いので目や浮腫みの症状が緩和されても、体調が悪くなることも考えられるので注意が必要です。
漢方薬の本治療は、症状の緩和を目的とする標治療と違い、花粉症そのものを解消させる目的の治療です。花粉症の症状が出る前から治療を始めます。本治療は標治療と違って、長期的に体の中の花粉症の原因となるアレルギーを治療します。
漢方がいくら自然の草や木からとった成分で構成されていても、その日の体調で気分が優れなくなることはあります。漢方薬の選定は専門の薬剤師や医師のアドバイスが有効です。自分にあった漢方を早く見つけることができます。特に妊娠中は、使用前に主治医に確認しておきます。
副作用と勘違いされやすいのは「瞑眩(めんげん)」という不快症状です。めまい、吐き気、頭痛、発疹などが現れますが、その症状が瞑眩の場合は治癒方向に向かっている際に、体の適応が起こすものです。しかし自分では判断しかねるので、必ず医師による診断を受けましょう。