帝王切開で出産するママや出産を経験したママ達には聞きたくない言葉があります。特に帝王切開の知識が乏しい会話では、知らず知らずのうちに相手を傷付けていることがあります。
帝王切開に対する偏見は、出産を経験した人にも見られます。それほど自然分娩をすすめる流れが大きく、帝王切開が第一の選択肢になるにはトラブルなど何らかの理由が必要だからです。そんなことから自然分娩のほうが凄いという偏見を持ってしまいがちです。
ところが現在のお産事情では、約6人に1人が帝王切開で赤ちゃんを産んでいます。こうした統計はなかなか話題にならないかもしれませんが、帝王切開はけっして珍しい出産方法ではなくなってきています。
帝王切開を自然分娩のできなかった人の選択肢と見る人は、「帝王切開になってしまった」ことをかわいそうだと思います。確かに自然分娩から帝王切開に切り替えたママもいますが、母子の生命を優先した選択なのでかわいそうだと思われることは不快なのです。
せっかく赤ちゃんを産んだのに「かわいそう」と言われたら悲しくなってしまいます。
帝王切開は麻酔を使用するので、赤ちゃんを産むときに痛みや苦しみがないと勘違いされることもあります。
実際は、麻酔は手術中の痛みを抑えるだけで、術後は切開の傷口と後陣痛に悩まされます。あまりの痛みに産後も麻酔が必要なケースもあるほどです。けっして苦しまずに出産しているわけではないのです。
帝王切開の手術は、トラブルがなければ1時間以内で終わることがほとんどなので、長時間の陣痛の末に出産した人から見れば、「短時間で出産できてうらやましい」と思うようです。
たしかに帝王切開の手術は短時間で終わりますが、その前の心の準備や切開への恐怖を考えると、時間だけでは判断できない大変さがあります。こうした心情は経験しないとわからない部分もあるので、なかなか理解してもらえずに傷つくことがあります。
もしも時間について言われたときは「短時間で赤ちゃんに負担をかけずに産んであげることができた」と考えてみましょう。
帝王切開は医療行為なので保険が適用されます。そんなことからも帝王切開で出産したほうが費用がかからないと思うようです。
実際は普通分娩のママよりも数日多く入院することもあって、普通分娩の費用とさほど変わらないか、もっと支払うケースのほうが多いです。分娩費用は個人差がありますが帝王切開のほうが10~20万多く見積もります。
高額医療制度や個人で加入する医療保険に請求できることから「帝王切開は安く済む」と思われがちですが、普通分娩でも出産育児一時金や産休中の出産手当金などの補助金はあります。なにも帝王切開だけが補助されているわけではありません。
もしも保険の話しがでたら「加入していて良かった!」とプラスに考えましょう。
帝王切開の傷跡を、体を傷付けたとみなす人も未だにいるようです。帝王切開の傷跡は勲章だという考えもあるように、母体の体を犠牲にして赤ちゃんを産んでいることに変わりはありません。
帝王切開のあとで切開跡を話題にするのは、ちょっとデリカシーが足りないとも思えます。ただ、現在の切開は目立ちにくい部分でおこなうので、普段の生活では人に言われるほど傷が目立たないことが多いです。
帝王切開で、切開跡を残してまで赤ちゃんを産んだ自分を褒めてあげましょう。
自然分娩は陣痛開始から時間をかけて母子ともに出産を頑張るイメージがあるので、「帝王切開の赤ちゃんは取りだされるだけで、母子の絆が深まらない」と考える人もいます。
実際のところは、それまで何ヶ月もお腹の中でママと一緒に成長しているのですから、帝王切開でも母子の絆は充分深いのです。単に赤ちゃんの生まれる手段が違うだけで、ママと赤ちゃんはちゃんと繋がっています。自信をもって赤ちゃんと接してください。
帝王切開では赤ちゃんは子宮から取りだされます。赤ちゃん自身が産道を進まないで出産するので「頑張れない」「我慢できない」などという言葉をかけられることも。帝王切開でも赤ちゃんは頑張っています。分娩方法で赤ちゃんの性格や人格が決まることはありません。
帝王切開のママと赤ちゃんが、不快になるような言葉は無視してください。ママと赤ちゃんにとって不要な言葉は聞き入れず、これからの子育てが楽しくなる話をしましょう。
もしも産院で精神的に辛くなるときは、面会を控えてもらいましょう。産後はママの体と心の回復が最優先です。
帝王切開を経験したママが傷つく大きな原因は、周囲が帝王切開をちゃんと理解できていないことです。
帝王切開を予定しているママは、パートナーや家族と一緒に医師の説明をうけることをおすすめします。身近な人が帝王切開について正しい知識をもっていると心強いです。