母乳は水分が多いので、赤ちゃんに負担がかからない特徴があります。さらに、赤ちゃんに必要な栄養素がたくさん含まれているので、大人の食事同様に授乳で栄養摂取ができます。母乳に含まれている代表的な成分は以下の通りです。
ビタミン・・・ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸。
たんぱく質・・・ラクトフェリン、アルギニン。
ミネラル・・・カルシウム、ナトリウム、鉄分。
脂質・・・DHA。
免疫グロブリン。
オリゴ糖。
母乳に含まれる脂溶性ビタミンはA・D・E・Kが代表的です。
ビタミンAは免疫力を高める成分で有名です。授乳期だけではなく、妊娠中も赤ちゃんの成長に関わっていますが、妊娠中は過剰摂取による胎児への悪影響が心配されています。
ビタミンDは、しらす干しや焼いた紅鮭に含まれる脂溶性ビタミンです。母乳に含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を助けるため、赤ちゃんの骨の発育を促してくれます。ビタミンDを十分に体内に吸収するには、適度な日光浴が必要です。
もしも、妊娠中にビタミンD不足になると、妊婦は骨軟化症(こつなんかしょう)に、生まれた赤ちゃんはくる病になる心配があります。母乳育児を考えたらビタミンDの摂取は妊娠中から気を付けましょう。
ビタミンEは抗酸化作用があり、牛乳よりも母乳のほうが沢山含まれています。ただ、ビタミンEは胎盤を通過する量が少量なので、出産時はビタミンEが十分に赤ちゃんの体内に蓄えられていない状態です。
ビタミンEが不足し続けると、赤ちゃんは溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)という赤血球が破壊させる貧血になる心配があります。ビタミンEは母乳を分泌しやすくする作用もあると言われています。
ビタミンKは、母乳中に不足しがちなビタミンです。ビタミンKが不足すると、赤ちゃんはビタミンK欠乏症になる危険があります。
ビタミンKは血液凝固因子(けつえきぎょうこいんし)を作る時に必要な成分で、不足すると頭蓋内出血(ずがいないしゅっけつ)や血便の出血症状が現れる危険があります。
ビタミンK不足を解消するには、ママの食生活も大切ですが、新生児期は1ヶ月検診時などに赤ちゃんに与えるK2シロップが予防策として知られています。シロップは経口投与か注射です。
葉酸は妊娠初期から大切だと言われている水溶性ビタミンです。産後の母体にとっての葉酸は、母乳を出やすくする成分です。赤ちゃんにとっての葉酸は脳や体の成長に必要な成分です。
葉酸を摂取するためには、妊娠中はほうれん草などの食品やタブレットなど、自分の生活に合わせて摂取方法を選ぶことができます。しかし赤ちゃんは未だ食品から摂取できないので、母乳からしっかり摂取させます。
葉酸はたんぱく質の合成に必要なので、母乳中の成分を赤ちゃんの体内で上手にコントロールします。ところが葉酸は体内で活躍できる期間が数ヶ月しかありません。そのため、常に新しい葉酸を摂取し続けることが必要です。
ラクトフェリンは、赤ちゃんだけではなく大人にも必要なたんぱく質として注目されています。母乳に含まれるラクトフェリンは、多機能たんぱく質として、機能が未発達な赤ちゃんの体内を守る力があります。特に初乳には、ラクトフェリンが多く含まれています。
ラクトフェリンは母乳だけではなく、殺菌前の牛乳にも多く含まれます。通常の出回っている牛乳は殺菌処理が施されています。ただ、牛乳は新生児には負担が大きいので、ラクトフェリンを摂取させようと考えたら母乳が最適です。
母乳に含まれるミネラルは、カルシウムやナトリウム、鉄分です。カルシウムは骨の生成で有名です。赤ちゃんはまだ骨が軟らかくもろい状態なので、カルシウムで骨を強化します。
カルシウムはママの摂取したカルシウムが母乳を介して赤ちゃんに届きます。母乳の優れている点は、ホルモンが作用して赤ちゃんの血液中のカルシウム濃度を一定に保てる点です。
母乳のカルシウムはママの骨から母乳に移行しています。細かく考えると、ママが摂取したカルシウムは先ず、ママ自身の骨となります。そこから赤ちゃんへ移行しているというわけです。直接は赤ちゃんに移行しませんが、摂取しないとママ自身の骨量が減少するので気を付けましょう。
母乳に含まれるナトリウムは、カルシウムやほかの栄養素が血液中に吸収される手助けをします。
消化吸収力が未発達な赤ちゃんにとって、ナトリウムは栄養素を吸収しやすくするために必要な成分です。含有量としては牛乳のほうが多いのですが、赤ちゃんは牛乳を飲めないので母乳から摂取します。
母乳の鉄分は、粉ミルクの鉄分よりも吸収しやすいと評価されています。ママが大量に鉄分を摂取したからといって、鉄分の含有量は一定なので変わることはありません。
母乳はママの血液から生成されています。その血液は鉄分からできるので、ママは妊娠中から鉄分を定期的に摂取できるように心掛けましょう。
ちなみにミネラルウォーターは赤ちゃんには適していません。ミネラルウォーターは赤ちゃんには少し負担があるものだからです。同じように粉ミルクの調乳にもミネラルウォーターは不向きです。
母乳に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、赤ちゃんの脳や視覚の発達を助けてくれます。特に魚料理を食べる日本人の母乳のDHA含有量は、他の国よりも多いという結果が出ています。
DHAは脳のシナプスという神経細胞の伝達部を作る材料にもなります。シナプスは生まれてから増えるので、DHAはシナプスの生成に携わります。
よく幼児教育で脳を刺激するという言葉がありますが、これは脳のシナプスを刺激することです。特に増加のピークは生後8ヶ月?1歳辺りです。
母乳に含まれているオリゴ糖は、赤ちゃんのお通じを良くします。赤ちゃんは、排泄だけでも体力をかなり使うので、便秘になるとすぐに苦しくなり不機嫌になりがちです。
また、オリゴ糖を母乳から摂取した赤ちゃんは、体内のビフィズス菌を増やすので健康的な腸を保つことができます。